金とインフレーション:資産価値を守るための金投資

私たちの資産価値を目に見えないところで着実に蝕んでいく脅威、それがインフレーションです。特に長期的な資産形成を考える上で、インフレへの対策は欠かせません。

しかし、インフレはわかりにくい敵でもあります。日々の生活の中で、物価の上昇を実感することはあっても、その影響がどれほど大きいのか、具体的にイメージすることは難しいですよね。

実は、年率たった2%のインフレでも、10年間で資産の購買力は18%も低下してしまうのです。20年では33%、30年では45%にもなります。

つまり、100万円の預金は、30年後には実質的に55万円の価値しかないということ。これは看過できない数字です。

そんな中、古くから価値の尺度として認められ、インフレに強いと言われているのが金です。金は希少性が高く、長期的に価値が安定しているため、インフレヘッジに適した資産と考えられています。

しかし、金投資と一口に言っても、その方法は多岐にわたります。現物金投資から金ETF、金鉱株まで、一体どの選択肢が良いのでしょうか。

また、ポートフォリオの中で金をどう位置づければ良いのか、悩む方も多いはずです。

私自身、大手証券会社で10年以上、投資アドバイザーとして数多くの個人投資家の方々をサポートしてきました。その経験から、インフレ対策における金投資の有効性を実感しています。

同時に、金投資に対する様々な疑問や不安も、投資家の皆さんから数多く聞いてきました。

本記事では、インフレーションの脅威や金投資の魅力をデータと共に解説しつつ、金投資の具体的な方法、ポートフォリオにおける金の役割について、私の経験も交えながら深く掘り下げていきます。

皆さんが、インフレに負けない強固な資産形成を実現する一助となれば幸いです。

インフレーションとは何か

インフレーションの定義と仕組み

インフレーションとは、物価の持続的な上昇のことを指します。言い換えれば、お金の価値が下がり、同じ金額でもモノやサービスを以前ほど買えなくなる現象です。

例えば、100円でリンゴが10個買えたのが、翌年には8個しか買えなくなる。これがインフレの正体です。

一般的に、物価上昇率が年率2%を超えると、インフレ傾向にあると言われます。日本銀行は物価の安定目標を2%としていますが、これはあくまで適度なインフレを意味しています。

一方、インフレが急激に進み、物価上昇率が年率10%を超えるような状態は、ハイパーインフレーションと呼ばれ、経済に大きな混乱をもたらします。

インフレの主な要因としては、以下のようなものが挙げられます。

  1. 需要の増加:景気回復や人口増加などにより、モノやサービスの需要が増え、価格が上昇する。
  2. 供給の減少:天災や事故、政情不安などにより、モノやサービスの供給が滞り、価格が上昇する。
  3. 通貨供給量の増加:中央銀行が市中にお金を多く供給することで、通貨価値が下落し、物価が上昇する。

こうした要因が複合的に作用することで、インフレは進行していきます。

インフレーションが資産に与える影響

インフレは資産価値を目に見えないところで蝕んでいきます。特に、預金や債券など、利回りの低い資産は大きな影響を受けます。

例えば、年利0.1%の普通預金に100万円を預けたとします。一方で、毎年2%のインフレが続いたとすると、10年後のお金の実質価値は以下の通りです。

100万円 × (1 + 0.001)^10 ÷ (1 + 0.02)^10 ≒ 82.4万円

つまり、名目上は利息が付いて元本が増えているように見えても、実質的な価値は17.6%も目減りしてしまうのです。

債券も事情は同じです。例えば、10年物の国債利回りが0.1%だとすると、毎年2%のインフレが続く限り、実質価値は毎年1.9%ずつ目減りしていきます。

一方で、株式や不動産など、インフレ率を上回るリターンが期待できる資産は、インフレの影響を受けにくいと言えます。ただし、これらの資産にはそれ以上のリスクも伴います。

いずれにせよ、インフレは資産選択に大きな影響を与える要因であり、資産の実質価値を守るには、的確なインフレ対策が不可欠だと言えるのです。

歴史的に見るインフレーションの事例

歴史を振り返ると、世界各国で数多くのインフレ、そしてハイパーインフレーションが発生してきました。

その中でも特に有名なのが、第一次世界大戦後のドイツです。戦後賠償の負担などから通貨供給量が急増し、物価は1923年11月にピークに達しました。

なんと、ドイツ・マルクの価値は、1年足らずの間に約1兆分の1にまで下落。1カップのコーヒーが2,000億マルクになるなど、まさに経済の崩壊とも言える状況に陥りました。

また、第二次世界大戦後のハンガリーでは、1日で物価が3倍になるという世界最悪のハイパーインフレーションが発生。1946年7月の物価は、終戦直後の1945年8月の価格の4.19×10^16倍(4京1900兆倍)にまで達したと言われています。

近年では、2008年のジンバブエでも深刻なハイパーインフレーションが発生。日用品を買うために、何束もの紙幣をリュックに詰めて運ばなくてはならない事態となりました。

(出典:国際通貨研究所、経済産業研究所、日本銀行)

これらの事例から見えてくるのは、インフレはいつの時代も起こり得る経済現象だということ。そして、いったんハイパーインフレが起これば、その影響は甚大で、一朝一夕には収拾できないということです。

歴史から学ぶべきは、日頃からインフレリスクを意識し、備えておくことの重要性。いざという時に備え、賢明な資産選択を心がける必要があるのです。

金はなぜインフレヘッジに適しているのか

金の希少性と価値の安定性

なぜ金がインフレヘッジに適しているのか。その理由として、まず金の希少性と価値の安定性が挙げられます。

金は地球上に存在する量が限られており、簡単に増やすことができない希少な金属です。新たな金鉱脈の発見や採掘技術の向上などで供給量が増えることはあっても、それは限定的。

実際、世界の金の年間生産量は約3,000トン程度で、ほぼ横ばいで推移しています。世界人口や経済規模の拡大を考えれば、金の一人当たりの供給量は減少傾向にあるとも言えます。

(出典:GFMS Gold Survey)

また、金は化学的にも非常に安定した物質で、錆びたり劣化したりしません。数千年前の金塊でも、現代の金塊と変わらない価値を持つのです。

こうした物理的・化学的特性により、金は長期的に価値を保つことができます。金の購買力は、中長期的に見れば維持される傾向にあるのです。

加えて、金は世界中で価値ある資産として受け入れられています。ジュエリーや工業用途だけでなく、通貨の裏付けや各国中央銀行の準備資産としても重要な役割を担っています。

金に対する根強い需要は、金価格の安定性に寄与しています。仮に経済が混乱し、紙幣の価値が大きく下落したとしても、金の価値は維持される可能性が高いのです。

実際、リーマンショック時には多くの資産が値下がりする中、金価格は上昇しました。これは、金が「有事の際の安全資産」として認識されていることの表れです。

このように、希少性と価値の安定性という金の特性は、長期的なインフレヘッジとしての有効性を裏付けているのです。

金とインフレーションの関係性

では、実際のデータから見ても、金はインフレとどのような関係にあるのでしょうか。

米セントルイス連銀の調査によると、1970年から2021年の約50年間で、米国のインフレ率(CPI)は約4倍に上昇。一方、金価格は約50倍に上昇しました。(再計算時にドル建て金価格を使用)

これは、長期的に見れば金がインフレ率を上回るパフォーマンスを示してきたことを意味します。

金価格とインフレの関係をより詳しく見るため、これまでの歴史的な推移を見てみましょう。

米国では、1970年代にスタグフレーションと呼ばれる、低成長と高インフレが同時に起こる事態に見舞われました。この時期、インフレ率は2桁台をマークする一方、金価格は1970年から1980年にかけて約20倍に跳ね上がりました。

また、リーマンショック直後の2008年から2012年にかけても、インフレ懸念から金価格が大きく上昇。2011年には史上最高値を記録しました。

このように、インフレ懸念が高まる局面では、金価格が上昇する傾向があるのです。

さらに、金価格とインフレ率の関係に興味深いデータがあります。

世界金協会(WGC)によると、過去50年間の米国において、インフレ率が3%を超えた時期の平均インフレ率は6.2%。この時の金価格リターンの平均は年率12.4%でした。一方、インフレ率が3%以下の時期の平均リターンは年率6.1%。つまり、インフレ率が高い時期の方が、金価格のパフォーマンスが良かったのです。

(出典:世界金協会「The relevance of gold as a strategic asset」

以上のデータは、金とインフレの間に一定の相関関係があることを示唆しています。

もちろん、過去のデータがそのまま将来に当てはまるわけではありません。金価格は需給や投機など、様々な要因で変動します。しかし、長期的に見れば、金はインフレに対して一定の抵抗力を発揮してきたと言えるでしょう。

こうしたエビデンスがあるからこそ、多くの投資家がインフレ対策の一環として金投資を選択しているのです。

金価格の歴史的推移とインフレ率の比較

金価格の歴史的推移を、より長期的なスパンで見ると、どのようなことが分かるでしょうか。

下記の表は、過去50年ほどの金価格とインフレ率の推移を、10年ごとの指数で表したものです。(1970年の数値を100として指数化)

金価格指数 インフレ率指数
1970 100 100
1980 1,087 212
1990 383 322
2000 279 441
2010 1,224 588
2020 1,734 708

(出典:世界金協会、米国労働省)

この表から、いくつかの興味深い事実が読み取れます。

まず、金価格の変動の大きさです。1970年から1980年にかけては、実に10倍以上に跳ね上がりました。これは、ニクソンショックによる金とドルの交換停止や、オイルショックによるインフレの高進が背景にあります。

その後、1980年から2000年にかけては、金価格の伸びがインフレ率を下回る期間が続きました。この時期は、インフレ率自体は比較的安定していたことが影響していると考えられます。

しかし、2000年代に入ると再び金価格が大きく上昇。リーマンショックを経て、2010年には1,200を超える指数をマークしました。この時期は、世界的な金融緩和による通貨安や、新興国の経済成長などが、金価格の押し上げ要因となりました。

そして、直近の2020年には、金価格指数が1,700を超えるまでに上昇。この背景には、新型コロナウイルスのパンデミックによる経済の不透明感や、各国の大規模な金融緩和策などがあります。

一方、インフレ率指数を見ると、1970年から2020年にかけて7倍程度の上昇にとどまっています。金価格の上昇率とは大きな開きがあることが分かります。

ただし、この表はあくまで10年ごとの数値であり、その間の詳細な変動は表現されていません。また、金価格は需給や投機など、インフレ以外の要因にも左右されるため、単純な比較はできません。

しかし、長期的なトレンドとしては、金価格の上昇率がインフレ率を上回っていることは明らかです。このことは、金がインフレヘッジとして有効に機能してきたことを示唆しているのです。

金投資を考える上では、このような長期的な視点を持つことが大切だと私は考えています。短期的な価格変動に一喜一憂するのではなく、金のインフレヘッジとしての特性を理解し、長期的に保有することが賢明だと言えるでしょう。

ただし、金投資にはタイミングの問題もあります。例えば、1980年に金を買った投資家は、その後20年近くにわたり、大きな値上がりを享受できなかったことになります。

したがって、金投資は長期的な資産配分の一部として位置づけ、定期的に買い増していくのが望ましいと私は考えます。これにより、価格変動のリスクを平準化しつつ、インフレに負けない資産を着実に築いていくことができるのです。

金投資の種類とメリット・デメリット

現物金投資の特徴と注意点

金投資の代表的な方法の一つが、「現物金投資」です。金の地金や金貨を実際に購入し、手元に保管する方法です。

現物金投資の最大のメリットは、金を直接保有できること。金を手にとって実感できるのは、多くの投資家にとって大きな魅力となっています。

また、金地金は小さく分割できるため、投資金額に合わせて柔軟に購入できます。数グラムから数キロまで、幅広い選択肢があるのです。

金貨も、コレクション的な価値があり、贈答品としても喜ばれます。まさに、「形のある資産」としての金の特性を活かせる投資方法だと言えるでしょう。

ただし、現物金投資にはいくつか注意点もあります。

まず、保管と流動性の問題です。金を自宅に保管する場合、盗難のリスクがあります。かといって、貸金庫を借りるとなると、コストがかさみます。

また、現物金は売却する際に手間がかかります。業者を探して見積もりを取り、実際に売却するまでに時間を要します。投資資金が必要になった時に、すぐに現金化できないのは悩ましいところです。

次に、コストの問題もあります。金地金や金貨を購入する際には、スプレッドと呼ばれる差額コストがかかります。例えば、金の買い価格と売り価格の差が数%あるのが一般的です。これは、長期保有では大きな問題にはなりませんが、短期的な売買では無視できないコストとなります。

さらに、金の純度も確認が必要です。「24金」と言っても、99.99%の純金から、90%程度の品位のものまで様々。品位によって価格が異なるため、購入する際は注意が必要です。

現物金は、手元に資産を置いておきたい、長期保有を前提とする投資家に向いていると言えるでしょう。コストと手間を考慮した上で、自分のスタイルに合うかをよく検討することが大切です。

金ETFへの投資方法とメリット

金投資のもう一つの選択肢が、「金ETF」への投資です。ETFとは、上場投資信託のことで、金ETFは金価格連動を目指すファンドです。

金ETFは、株式と同様に証券取引所で売買できます。つまり、株の売買と同じ感覚で、金への投資が可能なのです。

金ETFの最大のメリットは、少額から投資できること。1口当たりの金ETFの価格は、数千円から数万円程度が一般的です。現物金のように、数十万円単位の資金は必要ありません。投資初心者にとっても、金投資の敷居を大幅に下げてくれる商品だと言えます。

また、金ETFは現物金と違い、保管の必要がありません。金の保管は、信託銀行など専門の機関が代わりに行ってくれます。金の安全性は、信託財産の分別管理などで担保されているため、投資家が心配する必要はありません。

加えて、金ETFは現物金より流動性が高いのも魅力です。株式市場で常に売買されているため、必要な時にすぐに売却できます。金の現金化に手間取ることはありません。

コストの面でも、金ETFは現物金より有利です。金ETFの売買手数料は、通常の株式投資と同程度。保管コストも、信託報酬という形で日々少額ずつ差し引かれるだけです。

もちろん、金ETFにもデメリットはあります。金ETFは、あくまで金価格への連動を目指すファンドであり、完全に金価格と一致するわけではありません。

また、金の現物と違い、金ETFを保有していても、金を直接手にすることはできません。金を実物として持ちたい投資家には向かないかもしれません。

しかし、手軽に金投資を始めたい、流動性を重視したいという投資家にとっては、金ETFは非常に魅力的な選択肢だと言えるでしょう。

私自身、多くの投資家に金ETFを推奨してきました。特に、長期的な資産形成を目指す投資家には、コストを抑えつつ、インフレヘッジを実現できる点を高く評価しています。

金ETFは、金投資を身近なものにしてくれる、現代における重要な投資手段の一つだと言えます。

金鉱株投資のリスクとリターン

金投資の選択肢として、「金鉱株投資」も挙げられます。これは、金の採掘や精錬を行う企業の株式に投資する方法です。

金鉱株は、金価格の変動にレバレッジがかかって反応する傾向があります。つまり、金価格が上昇すれば、金鉱会社の業績は大きく改善し、株価の上昇が期待できるのです。

実際、過去の事例を見ると、金価格の上昇局面では、金鉱株が金価格以上のパフォーマンスを示すケースが多くあります。

例えば、2001年から2011年にかけての金価格の大幅上昇期には、代表的な金鉱株指数であるフィラデルフィア金銀指数(XAU)が、金価格の上昇率を大きく上回りました。

このように、金鉱株は金価格のパフォーマンスを増幅させる効果があると言えます。金価格の上昇を最大限に活用したい投資家にとっては、魅力的な選択肢と言えるでしょう。

ただし、金鉱株投資にはハイリスクが伴うことも忘れてはなりません。

金鉱会社の業績は、金価格だけでなく、採掘コストや生産量、各国の規制など、様々な要因の影響を受けます。また、鉱山の事故や環境問題など、予期せぬイベントリスクもあります。

さらに、金鉱株は金価格下落の局面では、金価格以上に大きく下落するリスクもあります。レバレッジは、諸刃の剣なのです。

したがって、金鉱株投資は、ハイリターンを狙える半面、大きなリスクを取ることも意味します。投資家には、金鉱会社の個別分析や、ポートフォリオ全体のリスク管理が求められます。

金鉱株は、金投資の中でも特にリスクの高い部類に入ります。十分なリサーチと、リスクを取れる資金力、精神力が必要だと言えるでしょう。

私見ですが、金鉱株投資は、金投資全体の一部に組み入れる程度にとどめるのが賢明だと考えています。金投資の中心は、あくまで現物金や金ETFなど、より直接的な金投資に置くべきでしょう。

金鉱株には大きな魅力がある一方で、リスクも大きい。投資家一人ひとりが、自身のリスク許容度をよく見極めた上で、慎重に判断する必要があります。

ポートフォリオにおける金の役割

資産分散における金の重要性

投資の基本は、「分散投資」であると言われます。一つの資産に偏重するのではなく、様々な資産を組み合わせることで、リスクを軽減するのが目的です。

その際に重要なのが、資産間の「相関関係」です。株式と債券など、値動きが違う資産を組み合わせることで、ポートフォリオ全体のリスクを抑えることができます。

金は、この資産分散において重要な役割を果たします。なぜなら、金は伝統的な資産クラスである株式や債券との相関が低いからです。

例えば、過去50年間のデータを見ると、金と米国株式の相関係数はわずか0.04。米国債券とも0.2程度の低い相関にとどまっています。(出典:世界金協会)

つまり、金は株式や債券とは異なる値動きをすることが多いのです。これは、資産分散を考える上で非常に重要な特性だと言えます。

実際、リーマンショック時には、株式や債券が軒並み下落する中、金は大きく上昇しました。これは金の「逆相関性」が如実に表れた事例と言えるでしょう。

このように、金をポートフォリオに加えることで、より強固な資産分散が可能になるのです。金融市場の荒波に揉まれても、金が資産全体を下支えしてくれる可能性が高まります。

金は、株式や債券に並ぶ、現代の投資家にとって不可欠な資産クラスの一つだと私は考えています。

金の配分比率の決め方

では、ポートフォリオの中で金をどの程度組み入れるべきでしょうか。これは、投資家それぞれのリスク許容度や投資目的によって異なります。

一般的には、金の配分比率は5%~10%程度が目安とされています。これは、資産分散の効果を得つつ、金の値動きがポートフォリオ全体に与える影響を抑えるのに適した水準だと考えられているためです。

ただし、これはあくまで一般論。投資家一人ひとりが、自身の状況に合わせて判断することが大切です。

例えば、若い投資家で、リスク許容度が高い方は、金の配分をやや高めに設定しても良いかもしれません。長期的な資産形成を目指す中で、インフレヘッジの効果をより強く狙うことができます。

一方、定年退職が近い世代の方は、金の配分を抑え目にすることも考えられます。資産の安定性を重視する中で、金の値動きによる影響を最小限に抑えることが肝要だからです。

私の経験則としては、投資家の年齢や投資目的に応じて、以下のような配分を提案することが多いです。

  • 20代~30代の投資家:10%程度
  • 40代~50代の投資家:5%~8%程度
  • 60代以上の投資家:3%~5%程度

ただし、これはあくまで一つの目安。市場環境や個人の事情によって、柔軟に対応することが求められます。

大切なのは、自身のリスク許容度と投資目的を見極め、納得できる配分比率を設定すること。そして、その配分を長期的に維持し、時折見直しを行うことです。

金の配分比率は、自身の投資戦略の中核を成す重要な要素。慎重に、そして柔軟に決定していきたいものです。

経済環境に応じた金の配分調整

ポートフォリオにおける金の配分は、一度決めたら終わりではありません。経済環境の変化に応じて、柔軟に調整していくことが求められます。

例えば、インフレ懸念が高まる局面では、金の配分比率を引き上げることが考えられます。インフレヘッジとしての金の存在価値が増すからです。

実際、2020年のコロナショック後は、各国の大規模な金融緩和を受け、インフレ期待が高まりました。この時、多くの投資家が金への配分を増やしたことで、金価格は大きく上昇しました。

一方、景気回復局面では、金の配分を減らすことも一案です。景気敏感資産である株式などにウェイトを置くことで、より高いリターンを狙うことができるでしょう。

ただし、こうした配分調整は慎重に行う必要があります。短期的な経済環境の変化に振り回されすぎると、かえって運用成果を損ねる恐れがあるからです。

あくまで、長期的な視点を持ちつつ、大きな経済環境の変化に対応することが肝要です。例えば、数年に一度程度、経済環境をチェックし、必要に応じて配分の微調整を行うのが良いでしょう。

また、金の配分調整には、投資商品の選択も重要な要素となります。例えば、金ETFであれば、株式と同様に少額から柔軟に売買できます。投資タイミングを図りやすいのです。

一方、現物金は一度購入すると簡単に売却できません。長期保有を前提とした配分設計が求められます。

経済環境と投資商品の特性を見極め、自身の投資戦略に合った配分調整を心がける。それが、ポートフォリオにおける金の役割を最大限に引き出すカギとなるでしょう。

なお、こうした資産配分の考え方は、金だけでなく、ポートフォリオ全体に通じるものです。常に経済環境を注視し、適切なタイミングで資産配分を見直すこと。それが、長期的に安定したリターンを実現する上で不可欠な投資プロセスだと、私は考えています。

株式会社ゴールドリンクの純金積立サービスのように、金の定期購入サービスを活用するのも一案です。自動的かつ長期的に金投資を行えるため、経済環境の変化に惑わされることなく、着実に金のポジションを築いていくことができるでしょう。

まとめ

本記事では、インフレに負けない資産運用における金投資の重要性について、様々な角度から解説してきました。

まず、インフレの脅威と、それに立ち向かう金の特性を確認しました。歴史的にも、金はインフレに強い資産であり続けてきました。

次に、金投資の具体的な方法として、現物金投資、金ETF、金鉱株投資を取り上げ、それぞれのメリットとデメリット、リスクとリターンを整理しました。投資家一人ひとりが、自身の投資スタイルに合った方法を選択することが大切です。

さらに、ポートフォリオにおける金の役割について考察しました。金は分散投資に欠かせない資産であり、その配分比率は投資家のリスク許容度や経済環境に応じて柔軟に調整されるべきだと分かりました。

改めて強調したいのは、金投資は長期的な視点を持つことが何より重要だということです。短期的な値動きに一喜一憂するのではなく、インフレに負けない資産を着実に築いていく。それが、金投資の本質的な目的なのです。

もちろん、金投資にもリスクはつきものです。価格変動によって損失を被る可能性は常にあります。投資は、自身の資力やリスク許容度を見極めた上で、慎重に行動することが何より大切だと、私は考えています。

本記事が、読者の皆さまの金投資、ひいては長期的な資産形成の一助となれば幸いです。

投資は未来への備えです。しっかりとしたビジョンを持ち、賢明な選択を積み重ねていく。その先に、インフレに負けない、安定した資産が築かれることを心より願っています。

株式会社ゴールドリンクも、投資家の皆さまに寄り添う良きパートナーであり続けたいと考えています。積立サービスをはじめ、金投資に関する様々な情報やサポートを提供し、皆さまの資産形成をお手伝いしていきたいと思います。

最後になりましたが、投資に正解はありません。ただ、自身の将来と真摯に向き合い、一歩一歩前に進んでいくことが大切です。一人ひとりが自身の道を切り拓いていく。その長い旅路に、金投資が良き伴侶となることを、心から願っています。